観たいと思っていたのに中々観に行けなかった
映画「ディア・ドクター」(監督:西川美和、キャスト:鶴瓶、瑛太、余貴美子、香川照之、他)をやっと観にいった。
西川監督の前作「ゆれる」が、とっても印象的な作品だったので、この映画は絶対観たいと思っていたのだ。
「神様、仏様」
と村人たちから慕われていた。
しかし医師は、重大な嘘をつき続けていた。
その村の医師であり続けるため、村人たちを救うため、嘘をつき続けなければならなかったのだ。
医師の嘘は、もうひとつの別の嘘をかばうために、つき続けることが困難になってしまう。
医師は失踪し、ついに嘘が暴かれた。
”その嘘は、罪ですか”
本人が望む、望まないに関わらず、命の長さを延ばすことが本物の医療なのか、
人情を優先するのは医療とはいえないのか、
そんなことをも考えさせられてしまう映画だった。
自分の病状が重いことを察しつつ、
「それぞれ独立した娘たちの生活のジャマをしたくない」
と、娘たちには内緒にしてくれと頼む母親、受け入れる医師。
それは、許されない嘘なのだろうか。
医師の失踪後、刑事に、
「(医師がついた嘘は)愛だったっていうのか」
と質問された薬卸の営業マンは、わざと椅子ごとひっくり返る。
そして慌てて助けようと手を差し出した刑事に言う。
「あなた、僕を愛しているわけじゃないでしょう? でも今、手を差し出しましたよね? そういうことなんですよ」
私が最も印象的だったのは、患者の命を救い、村人たちから笑顔と拍手で迎えられた医師の空虚な表情だ。
感謝されて、讃えられて、それなのに、彼は全く喜びなんて感じていない。
心の中に渦巻いていたのは、自分がついている嘘の重さと、その嘘の上に成り立っている賞賛というギャップに対する混乱だったのだろう。
あんなにたくさんの笑顔に囲まれているのにも関わらず、あんなに虚しい表情をしている人を、私は見たことがない。
山あいの村の緑の風景も素晴らしい。
私としては、ラストがちょっとあからさますぎる感じかな、
途中で伏線張っといて、ラストにつなげる感じにしたほうがよかったのではないか、
と思ったけれど、観終わってから考え直してみると、あれはあれでよかったような気もしている。
前作「ゆれる」と同じように、表面に描かれていることだけではなく、その裏に描かれているのはなんなのだろうと、あれこれ考えさせられてしまう映画だった。
こういう深みがある作品は、個人的に大好きだ。
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