「ロストケア」の映画が公開されたとき、観にいきたいと思ったけれど、リハビリ中のため映画館で観賞することができなかった。
そのため、原作を先に読んだ。
その時のブログはコチラ↓(あらすじのことなどはコチラで書いています)
先日、配信でやっと映画版を観られた。
内容については、前回、原作を読んだときに書いたため、今回はリハビリ中の実体験を踏まえて、映画を観た感想をつづろうと思う。
ネタバレ注意です!
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父親の介護をする尊い想いが消耗する
結果的に42人を殺めた 斯波宗典(しば むねのり)が、最初に殺めたのは実の父親だった。
病で、体が不自由になり、そのうえ認知症も進んだ父親の介護をしていた 斯波は、疲れ果ててしまった。
「介護をしたい」気持ちもあり、若くて体力がある人であっても、追い詰められ、消耗してしまうほど、介護は壮絶だった。
介護のため、働くこともできなくなり、貯金も底をつき、生活保護を申請するが、冷たく却下される。
「がんばってください」とすげなく言われ、「これ以上、なにをがんばればいいのかわからなかった」と彼は言う。
がんばれるのなら、がんばる
観ていて、役所に申請するとき、こんな冷たい職員がいるだろうかと思ってしまった。
なんで、この親子を助けようとする人が周りにいないのかと。
役所の職員、ケアマネ、福祉関係のスタッフ……、なんでこの親子を放っておくのか。
しかし、ふと、リハビリ中の自分の体験と重ねる。……いや、こういったことは実際にあるのかもしれない。
私もそうだが、自分でできることは自分でやろう、なるべく周りに迷惑をかけたくないと思っている。
たぶん、 斯波もそういうタイプで、周りに迷惑をかけないように、自分でできることはやろうとしていたのではないか。
でも、どうしてもできないことはあって、そういうときに助けを求める。
できないから、「助けてください」と頼む。
しかし、頼めば誰もが力を貸してくれるとは限らない。
それこそ、 斯波が言われたように、「がんばれるでしょ? がんばってください」と言われてしまうこともある。
自分でやれるのなら、やっている。
できないから、助けを求めているのに。
「一人で悩まないで」はキレイごと?
なにか事件が起きたとき、
「一人で悩まないで、相談を」
と世間では呼びかけている。
だけど、事件を起こした人たちは、みな誰にも相談をしなかったのだろうか?
していたかもしれないと思わない?
したけど、助けてもらえなかったのでは?
甘えるな。頼るな、自分の問題は自分で解決しろ、と。
みな、忙しいのだから、人のことなんて構っていられない。
面倒なことを言ってくる人とは距離を置け。
助けを求めた人は、甘えているのではないかもしれない。
一人で悩んで、限界で、がんばりようがなくて、助けを求めたのかもしれない。
コトが起きてから、「一人で悩まないで、言ってくれればよかったのに」とか、なんて無責任なキレイごと。
運が良かったのかもしれない
今までの人生、いえ、リハビリ中のことだけを考えても、いろいろな人たちに助けてもらってきた。
みんなが助けてくれたわけじゃない。
こっちの人に相談しても、そっけなくされたけど、別のスタッフが助けてくれたり、別の事業所が助けてくれたり。
だから映画を観たとき、誰も助けてくれる人はいなかったの? なぜ親子は2人きりの苦しい環境にいるの? と思った。
助けを求めれば、誰かは力を貸してくれるのではないかと。
しかし、それは自分の場合と重ねてしまったからで、自分はたまたま運が良かっただけかもしれないと思いついた。
助けてもらえそうなところ、思いつくところに相談しまくっているというのもあるかもしれないが、たまたま運よく助けてくれる人たちに出会えているだけなのではないか。
それはとてもありがたいことで、より一層感謝の気持ちがわくけれど、一歩間違えば、誰も力を貸してくれず、一人で追い詰められていたかもしれない。
困っている人を一人にしない
入院前も、良くして頂いた方たちには恩返ししたいという気持ちはあった。
でも、入退院、リハビリ生活を経て、仕事の枠を超えてまで力を貸してくれる人たちに出会い、「困っている人の力になりたい」気持ちはさらに強くなった。
現代は個人主義になっているように思われる。
一人ひとりが個性を持ち、自立することは大切。だけど、その一方で、困ったときは協力し合う、困っている人を一人にしないスタイルが必要だと思う。
力を貸すと言っても、自分を犠牲にしてまで誰かに尽くすのは違う。
それでは、この映画の斯波のようになってしまう。
誰かを介護したい、助けたいというような尊い気持ちが消耗し、追い詰められてしまわないように、協力し合うこと。
人手不足の介護業界。AIにできることは任せればいい。
しかし、人間力が必要になる「心に寄り添うような気遣い」こそ、人間たちが細やかにしていける世の中であったらいいなと願う。孤独のなかで苦しむ人がなるべく出ないように。
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