好きな映画としてあげた「ハッシュ!」、観た当時書いた文章が残っていたので、紹介します。

これは2002年に公開された映画。

つまり5年経っているわけで、今回文章を読み直してみたら、自分でも「こんなこと書いたっけ?」と思ってしまうような部分もあり、我ながら不自然なので、その部分には赤文字で「注」を入れておきました。

「ハッシュ!」     2002年4月30日

「ハッシュ!」という映画を観た。(監督:橋口亮輔 出演:田辺誠一 高橋和也 片岡礼子 他)
おもしろかったー! それでいて、切なくて、いろいろと考えさせられて、元気になれる映画だった。

生きてくのって悪くないじゃんって、心の底から思わせてくれるような。

この映画に出会ったきっかけは、何気なく観ていたTVで紹介されていたこと。

ゲイのカップルと1人の女性。

「苦さの向こうに、あきらめの先に、新しい希望があることを感じとり、あらゆる現実的問題を克服し、新しい”家族”の可能性をさぐってゆく。」(パンフレットより)

というような映画。

最初TVで紹介されているのを観たときは、

「ゲイの映画かー。興味ないなー」

って思っていた。

ところが出先で寄った本屋さんで、小説版「ハッシュ!」を見かけて、何気なく手にとり、パラパラと読んでみたら――
「おもしろそ……」
と思えて、衝動的に買ってしまい、一気に読んでしまった。

すごく魅力的だったんですよー。 文体も、内容も。

印象的だったところを抜粋しますと、
*引用*
暗がりに逃げてきたはずなのに、やっぱり理性っていうかステバチになれない自分がいてさ。
メチャクチャになりたいって思っているのに。何かが止めるんだよね。
どうでもいいって思いながら、どうでもよくないって思う本当の自分が見えてくるのって、結構ツライことだなって思ったんだけど

~中略~

だからね、やっぱりステバチにはなれないんだよな。
白馬の王子なんか待ってないんだ。 それは言える。 確かに。 つまんないもん。
そんなのより、もっと素敵な何かが自分には待っててくれるんだってなんか思ってる。
ひたむきに、下っ腹にクッって力を入れて毎日やってたら、やっぱり生きてて良かったって思える日はやって来て、人生捨てたもんじゃないとか思える日が来るはずなんだって。
だってさ、そうでも思わなかったらやっていけないじゃんよ、色んなこと。
すぐへこむんだもん、俺。
やっぱ、意気地ないかなぁ~。
ちきしょう、マッチョになってやる!

考えてしまったのは、
勝裕(田辺誠一が演じる役)が、一夜限りのお相手(ゲイの世界ですから……、想像におまかせします)が、ちょっとヘンな人だったのことを思いながらの場面。

*引用*
勝裕は、そんな時も「色んな人がいるし。 あの人もそんな悪い人じゃないんだし。」と思うのでした。
そういう彼のパーソナリティーは子供時代にも関係があるのでしょうが、やはり彼の自信の無さが大きく影響しているようで

す。
と、いうのを読んで、ドキッとした。(その前の描写がおもしろくて、吹き出しちゃったんですけど^^)

私も、関わっている人たちについてムッとくることがあっても、
「まあ、悪気があるわけじゃないんだろうし、いいところだってあるんだし」
と妙に物分りよく、納得してしまうことがあるから。

それどころか、
「私にも悪いところがあったかもしれないしね」
なんて思ってしまうことすらあるから。

これって、私の自信の無さからくるものなのかしらって、考えてしまった。

私って、そんなに自信が無い人なのかな。

そんなに物分りよくならないで、もっと感情ぶつけたりした方がいいんでしょうか? 我慢することなんてせずに。
(注:2007年6月現在、私はそれほど”物分りのいい人間”ではないと思います。というか、そういうこと、最近は全然考えなくなりました。当時は考えてたんですねえ)

映画の方は、小説版とは少し違っていたところがありましたが、涙あり、笑いありでとってもおもしろかったです!

3人とも当たり役!

3人の主役達それぞれに自分に重なる部分を見ていました。

最初は直也(高橋和也が演じる役)が、自分に近いなーって思ってたんですけど。

例えば、
「1人は基本じゃん」
っていう直也に、勝裕が、
「直也は強いから」
って言う。
直也は、
「強くないよ」
って言い返しながら、
”強くないから2人でいたいんじゃん、だから努力しようとしてるんじゃん”

って思うところとか、優柔不断な勝裕にイライラして怒ってるとことか。

でも、朝子(片岡礼子が演じる役)が、人との関わりを諦めたような生活を送りながらも、
「笑ったり、手をつないだり、なにかきれいだなとか、いいなとか、そういうこと、どんどん思えてきて」
そして子供を欲しいと思う。

「結婚とか、付き合うとかではなく、子供がほしいの」と。

そんな朝子が、
「子供産んで育てるのは、そんなふざけたこととちゃうねんよ」
とキツイ言葉を突きつけられる場面では、私自身が自分の甘さを指摘されてるような気がして、シュンとなっちゃったし。

勝裕が優柔不断ゆえに、いろいろなものを切り捨てることが出来ずにいるのを
「そんなことじゃダメだ」
って言われた時、
「わかってるけど、でもさ、これが俺なんだもん! 嫌いになっただろ!」
っていうような台詞を言うんですが、
うわ~、すっごく、この気持ちもわかる!って思ってしまいました。

「人間って、中々変われない」ってことについてはパンフの中で田辺さん自身が、
「自分のことを認めることが出来ない人に他人を愛する資格なんてないのかもしれません。
一方的に自分勝手に愛することにしかならないのですから。
ただ、なにもしないで開き直ってたらよくないと思うんですが。
ちゃんとダメなところがわかっていて、直したいとも思った上でちゃんと認めないと。
変わりたいと思う気持ちや目に見えない部分、意識が大切なのかもしれません」

と語っている。

パンフの中には「誰かに頼らずに一人で生きるとはどういうことでしょう。あなたにはそれができますか。」っていうアンケートがあって、これが正に、私が今考えていることだったので、偶然という名の必然を感じてしまったり(笑)
(注:5年前の私はこんなことを考えていたのですね。どうして考えていたのか、そして結論らしきものは出たのか、覚えていません。人はみんなひとりだと思いますが、でも、完全に”一人で生きる”なんてこと、可能でしょうか? 人里離れた場所でひっそりと暮らすとしても……、悪い意味じゃなくて人はどこかで誰かに依存しているもので、それでいいのだと思います。依存心が強すぎるのは好きではないので、ひとりで立とうという気合があれば、尚いいと思います。)

3人がそれぞれに孤独で、苦しくて、でも諦めきれなくて、そして築かれていく新しい関係……

1本の傘からはじまり2本のスポイトを経て彼らは……???

というこの映画、ゲイの世界がどうこうというのではなくって、人間として、共感できるところがたくさんありました。

人間臭さとか、優しさとかいっぱい満ちていて。

結局、どんな選択をしても、最終的に責任とるのは自分ってことでしょうか?

こんな形があってもいいんじゃない?

人生悩んでる方も、そうでもない方もぜひ♪



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