「パフォーマンス 青春の罠」を観た。
1970年に公開された(クランクインは1968年)、ミック・ジャガーとアニタ・パレンバーグが出演している作品。
何故、この映画を観たかというと、トニー・サンチェスの本の中の、ある記述が気になったからだ。
ミックが演じる”ターナー”役(引退したミュージシャン)は、かなりの変人で、現実のミックとはかけ離れているため、演じるのが難しいと思ったミックに、マリアンヌがアドバイスする。
※引用※
「どんな時でも、自分の地を出しちゃ駄目よ。この役を演るには、あなたはまともすぎるし、しっかりしすぎてるわ。自分をブライアンだと思ってごらんなさい。あのかわいそうで、ヤケクソで、中性的で、薬漬けになっているブライアンのようにね。でも、タフで、自己破壊的で、法律も気にしていないような、キースの面も取り入れなくちゃ駄目よ。そう、ストーンズがもう駄目になっちゃったあと、ブライアンとキースがどうなるか、それを考えて二人をうまくミックスすればいいわ。金をもてあましてすることもない二人が大きな屋敷に住んでいるところを想像してごらんなさいよ」
かわいそうで、ヤケクソで、中性的で、薬漬け……、ずいぶんな言われようですが、とにかく、この映画のミックを見れば、少しは(ミックから見た)ブライアンがわかるかなって思ったのです。
ミックはキースのキャラも交えて、この役を演じたのでしょうが、ブライアンのキャラも入れて演じているはずだから。
今までミックから見たブライアンがどんなふうだったのかなんて、本音で語られることもなかったように思うので、この映画を観ればわかるかも!と思ったのです。
↓あらすじ↓
脅し専門のチンピラ、チャス(ジェームズ・フォックス)は、追い詰められ殺人を犯してしまう。
チャスが身を隠すために選んだのが、元ロック界のスター、ターナー(ミック・ジャガー)の住む家。
彼はガールフレンドたち、2人(+子供1人)と一緒に暮らしていた。
ターナーとチャス、正反対のキャラクターの2人が、次第に理解しあうようになる。
チャスは海外逃亡を図ろうとするが、そのための偽造パスポートを届けに来たのは、チャスを探していた刺客だった。
そしてチャスとターナーは……
という感じの物語。
女装した厚化粧のターナー。
彼と女性2人との変態的なベッドシーン。
サンチェスによれば、このベッドシーンは、アニタとブライアンの性生活そのものだという。
実際のアニタも、8ミリでよく自分たちの生活を撮影していたそうですが、映画の中のアニタも同じようにしている。
これは、いわゆる「カルトムービー」というもの?
そういうものに、解釈なんていらないのかな。
サンチェスの本によれば、この映画は「あまりに刺激的であったため」、ワーナーにより公開を2年間保留され、しかも7人もの編集者が入れ替わり立ち代わりフィルムの編集に手を入れたそうだ。
私が観たのも、元の形からは大分変えられているものなのだろう。
だとしたら、それに対して解釈をするのは余計おかしな話かな。
このとき、映画初出演だったミックは、必死に映画に取り組んだそうだ。
そういうことを知っていて観たせいかもしれないけれど、ミックの演技は慣れない感じだった。
なんていうか、「演じてます」っていうのが、隠しきれてないというか。
ミックがもっと異様な存在感を出せれば、この映画はもっと素晴らしいものになったんじゃないかと思う。
ただ、歌う場面になると、内から出る不思議なパワーみたいなものを発して、カリスマ性が出ていた。
やっぱりミュージシャン、さすが!って思った。
こういうのを見ると、ミックは天才肌というよりも”努力の人”なのかもしれないと思う。
ミュージシャンとしてだって、デビュー当時は、かなり初々しかったですものね。
ステージを重ね、だんだん自信をつけてきて(たぶん人知れず努力もして?)、カリスマ性が出てきたっていうか。
私としては、見所はアニタでしょうか。
アニタの存在感すごい、さすが女優、って最初は思ったけれど、観ているうちに、
「これは演技というより、素なのかも」
と思えてきた。
サンチェスの本を読んでいると、アニタってよくわめいていて、
「なんてエキセントリックな人」
って感じなのですが、この映画の中のアニタは正にそういう人。
魔性の女っぷりも、たっぷり出てたし。
この頃のアニタは、もしかして一番輝いていたのかも。
ブライアンと別れたものの、まだブライアンから思われていて、キースにも思われていて、その上、熱を上げていたミックと共演できることになったのだから。
サンチェスによれば「現在のミックは、今までの彼女の人生で、最も重要な男であるキースとブライアンにそっくりだ。抵抗しがたい魅力を感じていたのだろう」とのこと。
この映画のアニタは「A Degree Of Murder」のアニタのキャラよりも、ずっといいです。
自然体って感じだし。
異性から見たら、たまらなく魅力的な女性に見えるんだろうなって、想像できます。
で、結局、この映画を観た目的である、
「ミックが演じるターナーの中に、ブライアンの姿が見られたか」
という点についてですが……、うーん……、その点では正直言って”期待はずれ”でした。
私は実際のプライベートのブライアンを知らないわけですから、言い切るのもヘンですが、私が観た限り、ミックはあくまでもミックなんですよねー。
”狂気”を必死に演じようとしている、”まともな”ミックなんです。
この後、ミックは別の映画出演もしていると思いますが、本当にミックが”努力の人”だったら、数段と演技力がアップしているような気がします。
というか、長年業界で活躍し続けているミックは、ただ単に「運がいい」とか「世渡り上手」というだけではなくて、やっぱり人知れない努力はしているのだと思いますが。
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