1989年のBBCの映像。

これはアルバム「Steel Wheels 」に収録されている「Continental Drift」の録音のために、メンバーがモロッコを訪れ、ジャジューカのミュージシャンと演奏をしているものです。

映像を観ていて、気になったのは、5分前頃に出てくるミックと話すポール・ボウルズ。↓

モロッコの映像でよく見かけるけど、この人は一体、誰?と思ったのです。(本当に無知ですみません)

ちょっと調べたところ、ポール・ボウルズとは作曲家であり、作家でもある人物。(1910-1999)

作曲家から作家になったのは、自身のサディスティックな欲望を創作の世界で満たすためだったと語る。

ニューヨークで生まれたが、アメリカの成功第一主義を嫌い、各地を旅し、モロッコに暮らすようになる。

1950年代中頃、モロッコに渡った同時代の作家ウィリアム・バロウズとはブライオン・ガイシンを通して知り合った。
(と、DVD「ポール・ボウルズの告白」では言っているのですが、自伝「止まることなく」の中にはブライオン・ガイシンとは妻のジェイン・ボウルズ(同じく作家)の友達として知り合い、自分がウィリアム・バロウズにブライオン・ガイシンを紹介したのだと書かれている)

ここで、ブライアンファンの皆様は、「ん?」って気になったこと、ありますよね。

そう、”ブライオン・ガイシン”。

彼は、ブライアンにジャジューカの音楽を紹介した人であり、キースとアニタが去ってしまったモロッコに、一人残された傷心のブライアンを介抱した人でもあります。

ブライオン・ガイシン(ロンドン産まれでアメリカ国籍を持つ。父親はスイス人、母親はカナダ人。1986年に70歳で逝去)は、画家で同性愛者で、ジャジューカの演奏を聞かせる「千夜一夜」というレストランを経営していた。

ブライオン・ガイシンの絵はブライアンも気に入っていたという。

和風な雰囲気の絵らしいのですが、どんな絵なのでしょう?

ブライアンが気に入っていたというのなら、ぜひ見てみたいです。
Godstar
ブライオン・ガイシンはこのアルバム(「GODSTAR THEE DIRECTOR’S CUT BY PSYCHIC TV」)のDISK2「 Brian Jones’ visit to Jajouka is described by Brion Gysin to Genesis Breyer P-Orridge in Paris in 1985 」でインタビューを受けています。
「ブライアンが……、マリアンヌが……、キースが……、ミックが……」と、特にブライアンについて話しているようなのですが、英語、わかりません……。

更にマンディ・アフテル著「ブライアン・ジョーンズ―孤独な反逆者の肖像」には、”ブライアンはウィリアム・バロウズに入れ込んでいた”とも書かれていたので、このあたりのことを知りたい!と強く思ったのでした。

というわけで、とりあえず今回はポール・ボウルズの初めての長編小説で、1990年に映画化もされた「シェルタリング・スカイ」について書きます。

サハラ砂漠を舞台にした「シェルタリング・スカイ」、映画化の際の監督は「ラスト・エンペラー」のベルナルド・ベルトルッチ。音楽は坂本龍一。

映画中にもジャジューカの音楽が流れている、という情報を知り、ますますわくわくしてきて、
「観るしかない!」
とレンタルしてきた。

大きなスクリーンで観られないのが、本当に残念だと思った。

月の砂漠をラクダが歩く様など、大スクリーンで観れば、自分がその中に入り込むような感覚になれたはず。(月はCGではないそうだ)

簡単なあらすじとしては、
「モロッコを訪れた倦怠期の一組の夫婦(ポートとキット)と、その友人男性(タナー)。
夫婦は旅を通して、二人の間に流れる違和感を払拭できたらと淡い期待もしている。
旅を続けるうち、タナーとは別行動になり、夫婦だけになる。
ポートが伝染病(腸チフス)にかかり、医療施設が整っていない土地で命を落とす。
一人になったキットは、次第に正気を失っていき、砂漠を横断する隊商と行動を共にする。
全てを失い、助け出されたキットは、旅の初めに三人で過ごしたカフェに帰ってくる。」
という感じ。

圧倒され、吸い込まれるような映像――、素晴らしい映画だと思いましたが、原作者のポール・ボウルズは、前出の「ポール・ボウルズの告白」というドキュメンタリーの中で、
「(シェルタリング・スカイは)映画にすべきではなかった。映像化は無理だ。すべて頭の中で起こるんだから。本で読むのはいいが、視覚化はできない」
と言っている。

ウィリアム・バロウズに(映画の)ラストはどうだったか、と聞かれ、
「最後はばかげている。ほかもひどいが、最後の部分は許しがたい」
とこたえる。

「早くローマに帰りたくて、完成を急いだんだろう」と、かなり辛辣でもある。

映画のラストは、カフェにいる一人の客として存在しているポール・ボウルズ自身のナレーションなのですが。
映画(DVD)を最初に観た私は、
「それなら原作がどんな感じなのか、読んでみよう」
と思い、古本を入手し読破。

ジャジューカを聴きながら読みたい雰囲気だった。

ん~、これは、映画を先に観たのか、原作から入ったのかで大分印象が変わる……、でしょう。

原作がある映画は、大体の場合、原作を超えることは出来ないように思う。

原作を読んでから、映画を観ると、がっかりすることが圧倒的に多い。

しかし映画を先に観て原作を読んだ場合、登場人物が映画の俳優たちと重なり、またその展開も頭の中で映画の映像と重なりながら進んでいく。

なので私は、原作を読みながら、ポートはポートを演じたジョン・マルコヴィッチにしか思えず、キットはキットを演じたデブラ・ウィンガーに思えてしまった。

この映画が好きな方は「あのラストがいい」と思うのだろうし。

映像としての「シェルタリング・スカイ」は、ひとつの独立した作品として、素晴らしいものだと思える。

しかし、原作と比べると、テーマが変わってしまっているように感じる。

たぶん原作が描いているのは、映画のラストのように「こういうことなんですよ」と、言葉で表現してしまうものではないのではないだろうか。

登場人物たちが抱えている荷物の重さ、その場の空気感など、言葉ではない何かを感じとれるのが原作の素晴らしさなのだと思う。

ポール・ボウルズ自身は認めていないが、映画を製作した監督はじめ、周りにいる人たちは、ポートとキットは自分たち(ポールとジェイン)をモデルにしていると言う。

夫婦なのに、別々に暮らしていたというポールとジェインは、旅をしながら別室で過ごすポートとキットのようだ。

「シェルタリング・スカイ」の欠点は、互いに愛情はあるのに、夫婦がこうなってしまった原因が描かれていないところだと、ジョー・マクフィリップス(学校校長)は語っている。

確かにそれが大切なところなのに、描かれていないのは不自然だ。

そんなことは感じ取れ、と言われれば、そうなのかもしれないけれど、やはり、私はその部分を描いたほうが、よりよかったのではないかと思う。

それは、ポールとジェインをモデルとして考えるならば、”二人が共に同性愛者だったから”、かもしれないし、”ポール・ボウルズが誰も、自分自身をも愛せない人間だったから”、なのかもしれない。

「優しくしてくれるけれど、愛情がない」
という事実を、自分と向き合う相手の中に見つけてしまったとき、人は底が見えない孤独を感じるだろう。

”それでも自分は相手に好意を持っているから”、”相手は優しくしてくれるから”、そこには打開策も見えてこない。

「シェルタリング・スカイ」という題名を決めたのは、マディソン・スクエアに向かうバスの中だったという。

第一次大戦前に「庇護する椰子の木々の奥へ(Down Among the Sheltering Palms)」という歌謡曲があり、”Sheltering”という不思議な響きの虜になった。

小説の舞台はサハラ砂漠で、そこには空しかないから題名を「シェルタリング・スカイ」に決めたそうだ。

執筆したのは、1947年から1948年。

ポール・ボウルズは自分がモデルではないとは言いながら、物語中に実際に遭遇した奇妙な振る舞いをする息子と母親の親子を出し、自身の腸チフス体験を描いたりしている。

映像の中で語るポール・ボウルズをみて、
「ソフトな感じだけど、ちょっと変わってる人かも」
と思った。

全てに(自分に対してですら)客観的であるところも、
”郷に入っては郷に従え”を嫌って、「最上の喜びは外国人であること、異人種の中で」と千夜一夜物語の言葉を引用して言うところも。

周りの誰になにを言われても、自分を絶対に変えない人、という印象。

でも「全ての小説は(狭い意味ではなくて)推理小説である」など、同意できるところもあったりして。

芸術をジャンル分けするのはおかしい、とか。(マリアンヌ・フェイスフルも同じようなことを言っていましたね)

一緒に食事をするなど、サルバドール・ダリとの接点もあり、このあたりの時代や過ごしている環境が、ブライアンとも重なります。(「サルバドール・ダリが愛した二人の女」に書きました。)

ポール・ボウルズは「自分は存在しない」と考えてきたそうですが、自分を言い表す最良の方法として、「その人の住む環境を表現すること、またその環境に対する反応も探ること」と言っている。

ブライアンを知るために、ブライアンが接してきた人、物について知ろうと思っているのは、間違いではないということでしょうか。





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