山本文緒さん原作の「あなたには帰る家がある」がドラマ化されて放映されている。

山本文緒さんファンなので、久しぶりにドラマをチェック。

出演者の皆さんの演技、すごいですね。これも久しぶりの感覚ですが、プロの演者のすごさをあらためて感じている。

原作のドラマ化ですが、原作とドラマは少し設定が違う。

原作のネタバレになるので、大きく注意しときます。

原作ネタバレ注意!!



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佐藤真弓

ドラマだと中谷美紀さんが演じている。

原作では28歳。結婚して1年半。子供の麗奈(れいな)は、まだ1歳の赤ちゃん。

恋人だった秀明との間に子供ができて結婚した流れは、ドラマと同じ。

二年前の秋、真弓は秀明と結婚した。彼と交際を始めてから一年半で、子供ができてしまったのだ。

真弓は必死だった。秀明をどうしても放したくなかった。秀明は頼むから今回の子供は諦めてくれと頭を下げたが、子供を堕ろした後うまくいったカップルを真弓は知らなかった。ここで結婚に持ち込まなければ、もうその後はないと思った。

真弓と秀明は結婚をして、新居を購入。

新居は都心から1時間ほどのところにある3DKのマンション。真弓の父親が頭金を出し、ローンを組んだ。(原作では、真弓の両親は揃っている)

新居の周りには緑も多く、バスで10分ほどのところに私鉄の大きな駅。買い物にも困らないという、文句なしの環境。

子供を産み、育てながら、専業主婦として居心地のいい部屋で過ごしていける、つらい会社勤めから解放される、結婚したときは、そう思っていた。

ところが自分が料理嫌いだということに、結婚してから気づく。

これから一生、朝ご飯と昼ご飯と夕ご飯のことだけ考えて生きていくのね。そう考えると、ばったり床に倒れてしまいそうだった。

真弓は仕事を探し、子供を預けて保険のセールスレディとして働きに出ることになる。

佐藤秀明

秀明は真弓の夫。真弓より2歳年下の26歳。ドラマでは玉木宏さんが演じている。

映画配給会社の契約社員だったが、結婚を機に、中堅のハウジングメーカーの営業マンになった。

後輩の森永祐子(ドラマでは森永桃、高橋メアリージュンさんが演じている)は、秀明が既婚者であると知りながら、恋心を抱いている。

子供ができなかったら結婚しなかっただろう、と秀明は考えている。30歳くらいまでは結婚はしないと思っていたから。

ところがその話をしたら、交際中だった真弓が泣き出した。仲直りのため、彼女の機嫌を直すための行為で子供ができた。

喫茶店で会い、今回は諦めてくれと告げると、真弓は周りの視線も気にせず「絶対産むわ」と泣き叫んだ。

好きだから付き合っていた彼女だったが、結婚は先のことだと思っていた。

「子供ができたことを父親に話した」という真弓の言葉を聞いて青くなり、同時にやつれている真弓をみて心が痛んだ。

一生結婚しないと思っていたわけではなかったので、秀明は真弓と結婚した。真弓の父親の紹介で転職もした。

あの時子供ができなかったら、きっとずるずると長く付き合い、結局お互いの短所を認めることができずに別れたに違いない。

(中略)

でも子供が邪魔かというと、そうではなかった。自分の子供というものは、想像をはるかに超えて可愛いものだった。

茄子田太郎(なすだ たろう)

茄子田太郎は、ドラマだとユースケ・サンタマリアさんが演じている

原作では、ずんぐり太った体型。いかにも安そうなジャケットを着て、髪は七三に分けている。33歳の割には老けている。職業は教員。

両親と同居。

結婚していて、子供は男の子2人。長男は自分の子供ではない

住んでいる家を二世帯住宅に建て替えるために、秀明がいるモデルハウスを家族連れで訪れる。大きな態度をとる太郎のことを、仕事でなければ口をききたくないタイプだと、秀明は思う。

太郎は女遊びをしているが、素人の女性には声をかける程度で手を出せない。自分には普通の女性に相手にされる魅力がないことはわかっている。

太郎の父親、2人の息子とともに訪れた太郎の妻の綾子のやさしい笑顔を見て、なんでこんなに感じの良い女性が、こんな男と結婚をしたのだろうと秀明は思う。

茄子田綾子

茄子田綾子(ドラマでは、木村多江さんが演じている)は、20歳のときに、太郎と結婚した。妊娠していたが、太郎の子供ではなかった。

結婚してから10年近くが経っている。

長男の実の父親は、実の姉の夫、つまり義理の兄だった。

姉は今や3人の子供の親で、両親と二世帯住宅で同居している。

小学校から高校を卒業するまで、綾子はいじめに遭っていた。最初は仲良くなれるのに、綾子にはなぜ自分がいじめられるのか、理由がわからなかった。

高校を卒業し、家事手伝いになり、平穏な毎日を過ごしていた。

5歳上の姉が結婚することになり、穏やかで優しい姉の結婚相手に、綾子は恋をした。

結婚式前、1度きりの関係だった。姉の結婚式の翌週、綾子は妊娠に気づいた。「絶対産もう」と心に誓った。

見合いの話は、しょっちゅうきていたので、見合い写真の中から一番女性にもてなそうな男を選んで見合いをした。

見合い相手の茄子田太郎からは、即OKの返事が来た。

お腹の子供のことを告げると、太郎はショックを受けたようだったが、2人の子供だと思って育てようと言ってくれた。

子供が産まれてから、血液型の問題で、茄子田の両親にバレてしまったときも、太郎は綾子をかばった。「どうしても許さないというのであれば、俺は綾子と家を出る」

茄子田太郎の両親

茄子田太郎の両親は、息子を溺愛して育ててきた。

美人で物腰のやわらかい綾子に、秀明は好意を持っている。

建て替えの件で茄子田家を訪れた秀明に、太郎の母親は、嫁の綾子について言う。

「働き者で子供が好きで、優しい人だよ」

だから、あたしはあの人が嫌いなんだ、いい子ぶりっ子が、と続ける。

「あたしから家事を取り上げて、勝手に自分だけが大変な顔をしてる。

(中略)

おとなしそうな顔してるけど、あの女は相当なもんだよ。この家は太郎のもんだ。嫁なんかに自由にされてたまるかい」

秀明は怒りを覚える。元々、綾子に好意を持っていたこともあり、同情する気持ちが拍車をかけ、2人は不倫関係になってしまう。

秀明と真弓の勝負

真弓は、秀明が仕事を辞め、自分が一家の働き手になるのはどうだろうと秀明に提案する。

真弓の稼ぎだけでは無理だという秀明に、真弓は勝負を仕掛ける。

3か月分の真弓の稼ぎの合計が秀明の稼ぎを越えたら、真弓のいう通り、会社を辞めて主夫になる、真弓の現在の稼ぎを考えると不公平になるから月10万円のハンディーをつけた。

真弓は、茄子田太郎に会っていた。学校に営業に行き、契約欲しさに太郎に気に入られるために、離婚して子供を育てているシングルマザーだと嘘をついた。

契約がなかなかとれず、保険セールスの仕事は難航していたが、茄子田家の契約がとれれば大きかった。

秀明は、太郎の父親と話していて、綾子の長男が太郎の子供でないことを知る。

そして、真弓が茄子田太郎に営業をかけていることも知る。保険契約を優先し、家の建て替えをキャンセルしてきたら、確実に真弓との勝負に負けてしまう。秀明は焦った。

「新築の契約が欲しいんだ、助けてくれ」秀明は綾子に頼む。

最初は秀明を突き放した綾子だったが、考えているうちに秀明は自分との将来のためにお金が必要なのではないかと思えてきた。助けてあげたい、と綾子は思った。

一方、真弓は秀明の職場の後輩、森永桃から、秀明の不倫相手が綾子だと知らされる。

今この瞬間も、真弓は秀明が好きだった。こんなことになっても、何故自分は夫が好きなのだろうと真弓は思った。

好きなのに、何故嫌いなのだろう。矛盾した問いが浮かぶ。好きだけれど、大嫌いだった。離婚してやりたいぐらい嫌いなのに、やはり大好きなのだ。

人が人を好きになるということは、どういうことなのだろう。考えれば考える程、訳が分からなくなる。

修羅場

ドラマでもすでに出てきましたが、秀明の子供を妊娠したと思い込んだ綾子が、秀明と綾子の住むマンションに乗り込んでくる。

そこに、太郎もやってくる。真弓がシングルマザーではなく、秀明の嫁だと知って、さらに逆上する。

秀明に迫る綾子。秀明に殴りかかる太郎。

部屋の外に飛び出して乱闘になり、秀明は非常階段を転がり落ち、怪我を負う。

結末

入院することになった秀明は、真弓に言う。

茄子田家の契約をとれなかったから、勝負は自分の負け、もう愛想が尽きただろうから、自分は実家に帰る、養育費は送るようにする。

真弓は秀明に言う。勝負に負けたら主夫になると約束したのに破るのか、と。

「愛想なんてとっくに尽きてるわよ。でも私、ヒデを許さない。あなたは主夫をするのよ。私が働いてお金を稼いでくるから、あなたは家で家事をするのよ。麗奈の面倒をみるのよ」

秀明は会社を辞めて主夫になる。

茄子田家の次男に偶然会って、茄子田家が保険契約などしていないことを知る。

「もう帰ろうよ!」

ぐずる麗奈に秀明は笑って頷く。

そうだ、もう帰ろう。自分には帰る家があるのだから。

山本文緒ワールドの魅力

山本文緒さんの小説を最初に読んだとき(最初に読んだのは「パイナップルの彼方」)、「なんておもしろいんだろう!」と思った。

なにがおもしろいのかって、とにかく登場人物がしょーもないのだ。

どこかが、なにかが、しょーもないのだ。

それぞれの考えがあって、生きているように思えるけれど、やっぱりしょーもない人たちなのだ。

だから読んでいると、ホッとする。しょーもなくても大丈夫なんだって。

 

そして山本文緒さんの作品のおもしろさは、スッキリしないところにあるのかもしれない。

理不尽さというか。

1+1が2になるどころか、マイナスになってしまうこともあるとか。

それが見事にリアルなのだ。

だって、現実の中では、納得できないことはたくさん起きる。ドラマのように、すべてが丸く収まることばかりではないでしょう。

人の心の綺麗な部分と、醜い部分、ダメな部分を描いていて、どれも否定していない。泣きたいくらい孤独なところと、泣きたいくらい誰かの存在がありがたいところと。

 

そしてタイトルのあなたには帰る家があるの、”あなた”は誰なのか、”家”とはどこなのか。

 

単純に考えたら、ラストのほうに出てくる文章から、”あなた”は秀明であり、”家”は秀明と真弓と麗奈の家である。

しかし、それだけではない、もっと大きな意味があるように感じられる。

秀明は自分の中から、何かがなくなってしまったのを感じた。子供の頃には、大きな塊だったもの。それは大きな氷のようなものだ。時間とともに少しずつ、それは溶けていった。なくならないように、全部溶けてしまわないように、気を付けていたはずだった。けれど、それはもう跡形もなく姿を消し、どこかへ流れていってしまったように感じた。

この部分が、この作品の重要なところのような気がしている。

誰にでもあることかもしれない。大切にしていたはずのものが、気付いたらなくなってしまっていたとか、こんな場所を目指していたはずではなかったのに、なんでここに来ちゃったのかなと思うことが。

 

秀明が、なくなってしまったと感じたもの、それは「心の拠り所」なのではないだろうか。

自分の支えになっているもの、自分が帰れる場所。

年を重ね、状況が変わってくると、「心の拠り所」と信じていたものを見失うこともあるのだろう。

でも、本当に「心の拠り所」はなくなってしまうものだろうか。

実は姿を変えて、在り続けているものなのではないだろうか。

 

例えば秀明は、「子供を堕ろしてくれ」と言っていたけれど、生まれてみたら「こんなに可愛いものなんだ」と感じている。

一貫性が無いように思えるけれど、それでいいのではないか。

人は生きていく中で、いろいろなことを学び、知らなかったことを知るのだから。

 

秀明の中で溶けてなくなってしまったものは、秀明の中で在り続ける必要がなくなったから、なくなったのではないのか。

今は可愛くて仕方がない娘も、成長して離れていくのだろう。

でもそれは、大切なものがなくなってしまうことではない。

状況が変わる中で自分を知り、その状況の中で大切なものを感じる。

 

タイトルの”あなた”は、作品を読んでいる読者全員であり、”家”が意味するものは、心の拠り所。

つまり、

「みんな、心の拠り所はあるはずだよ、そこに居ていい場所はあるはずだよ、状況が変わると形は変わるかもしれないけど」

という意味なのではないかな?と感じた。

 

しかし、みんな、しょーもない、みんな不完全。

それでも、必死に生きている。

山本文緒ワールド、気持ちいいー^^

 

私が持っているのは、この装丁のではないのですが。↓

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ドラマの結末も楽しみにしています☆

↓気になるユースケ・サンタマリアさん演じる茄子田太郎について、考えた記事を書きました。

 

「note」に短編小説他、掲載中

 

 

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