「リアルワールド」(桐野夏生著、集英社文庫)を読んだ。

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ありふれた夏休みの昼、隣の家からガラスが割れるような音がする。

隣の家の息子が母親を殺して逃走したのだ。

ミミズこと犯人に関わっていく、4人の女子高生たち。

バラバラの個性を持つ彼女たちは、理解しあえているようで理解しあえていない。

でも、人の本当のところなんて、誰にも理解できないのだから、これくらい理解しあえていれば充分なのかもしれないとも思う。

一見、ありきたりでお気楽な彼女たちは、それぞれの形で事件に関わり、事件の成り行きに直面し、それぞれの道を歩んでいくことになる。

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リアルだなあ~、と思った。

いえ、隣の家で殺人事件が起こるなんて、そうそう起こることではないのだから、リアルとはいえないでしょう……、

それでも私はこの小説をリアルだと思ったのだ。

事件にショックを受けながらも、何故か軽いともいえる気持ちで犯人の逃走を応援するようなことをしてしまう女子高生たち。

ありえない!と思う一方で、リアルなのだ。彼女たちの心の動きが。全く不自然には感じられない。

それどころか、ありえそう、と思えてしまうのだ。

※引用※

私は母への不信を何とか覆い隠して、母を信じ、愛そうとしている。だが、それは破綻するかもしれない。なぜなら、私は信じられない者を愛している自分を信じられなくなってきているのだから。親の子供への虐待というのは、きっとこういう構造なのだと思う。愛する親が信じられなくなっても受け容れる子供は、いつしか自分を信じられなくなる。

正にリアルワールド!

この複雑な心の構造を、言葉にして綴れる力量はさすがだと思う。

複雑……、いや、実はすごく単純なのかな。

生まれてきたから生きているっていう単純なことが、時にとてつもなく複雑に感じられてしまうことがある。

人生が背負いきれないほど重たくなって、放棄してしまいたいような心境にかられることがある。

とりあえず事件は結末を迎えるが、
結局、残された人間は逝ってしまった人の思いを受け入れながら、生きていかなくてはならないのだ。

誰かが受け入れてストップさせなければ、一旦回り始めた悪循環は止まらなくなってしまう。

放っておけば悪循環を続けてしまうリアルな世界を少しでもよい方向へと導けるのは、残された人間だけ。

足を踏ん張って、拳を握り締めて、目の前の真実を受け止めていこう。

思わず引き込まれて読み終えたフィクションである小説から、リアルな人間たちの悲しみや叫びを感じられたような気がした。




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